シゲハル=ムラサメの急降下爆撃を、ギリギリのところかろうじてかわし、海面スレスレを逃げまくる蒼き狼パイロットのジャンジャック=スオウ。彼の上方から、シゲハル搭乗機のシューティングスターから、容赦なく機銃掃射が降りかかってくる。
急降下爆撃の衝撃で、機体一部に損害を被りながらも、紙一重で弾丸雨あられの嵐を次々にかわしていく。このスオウという男は、第一次大戦から機体がぶっ壊れていようが何だろうが、襲い掛かってくる機銃、砲弾の嵐を数えきれないほどくぐり抜けてきた。
戦闘機対戦闘機の戦いとは、果てしなく広がる大空のもと、地上で繰り広げられる戦闘よりも、一人の人間の戦闘領域ははるかに広い。コックピットから開けた視界は、その領域全てを凌駕するにはあまりにも狭い。いったいこの男は、常人には理解しえないほど超越した視野を持ち、そもそもどこに目がついているのか、普通の観点から考えると非常に謎すぎるほどに、四方八方からの攻撃をかわしていく。
だがその一方、シューティングスターも一筋縄にはいかない。蒼き狼には後ろ向きに機銃もついている。前向きの機銃すら、戦闘機という宙を飛ぶ機体から狙い撃ちするのはなかなか難しく、後ろ向きのそれはなおさらである。スオウは前方はもちろん、後ろ向きも得意ではあるが、シゲハル級には当たらない。よって、できるのはただ一つ、全速力で逃げるのみ。とにかく突貫工事兵のカズキ搭乗機体”ブリスター”からこいつを引き離さなければならない。
そんなスオウの努力は実を結び、なんとか護衛していた小型戦艦の対戦闘機撃破砲、すなわち高射砲の有効射程範囲まで、シゲハルをおびき寄せた。高射砲がシューティングスターめがけて火を噴いた。