G-75DH3GZ7WH AGE-原罪-第十八話 - 無料小説漫画 フルムーン

AGE-原罪-第十八話

AGE-原罪

シゲハルがバルドーから脱走後、ラーミラ王国国家君主の、レディー.ジョングラン女王の側近(政治家)となり、第二次大戦が始まり、一年の歳月が流れた。女王の側近となると同時に、彼女から下賜された名前はイオリ=ミハイルであり(さすがに脱走兵となったシゲハル=ムラサメの名前での活動はできない)、今現在彼はその名前で、ラーミラ王国同様、戦争に与しない中立の立場をとる、他国へ外遊中である。そこで外交上の公務にあたっている最中、Z2から電話がかかってきた。

「あっ、シゲハル君?俺だけど、ちょうどいま、おもしろいイベント考えちゃったんだよね。」

こんな忙しい時に、いや、そうでなくても、Z2、こいつの声はいつ聞いても虫唾が走る。シゲハルはシカトして、ガチャ切りしてやろうとした矢先、彼は信じられないほど、驚くべき事実を聞かされることになった。

「ちょっと、話は最後まで聞くものよ!実はラーミラ王国軍の上層部から、ある依頼を受けてね。それは、軍の意向に真っ向から反対の、平和路線をとろうとする、レディー.ジョングラン女王の暗殺。シゲハル君だって、いまや彼女の側近であり、王国の為政者となっているわけだから、その立場からして、国家君主の暗殺なんて、絶対にあってはならない一大事でしょう?」

現在女王はラーミラ王国において、同じ立場の中立国の要人と謁見中である。そんな彼女に、すでにZ2は暗殺者、刺客を差し向けたというのである。王国から遠く離れたイオリには、どうすることもできない。彼女の命運は、このZ2と暗殺者の手に、完全に委ねられたのだ。言葉を失ったイオリに、Z2はさらに話をつづけた。

「今ちょうど、ドゥーシェのジャンジャック=スオウ君からも、ある依頼を受けてね。それを受ける条件とは、俺の用意したイベントに勝つこと、即ち、バルドーが誇る三人のエース級のパイロットたち、ヒロヨシ=ニシモト君、トシオ=オオノ君、トシアキ=ホンノ君の搭乗する最新鋭機”サクラ”三機を、今となっては完全に旧式となった”レイ21″で撃ち落とすこと。そしてシゲハル君、何を隠そう、この三人は第一次大戦中の、君のかつての部下たちだよね、君の窮地だと言ったら、彼らは喜んで集まってくれたわけよ。」

Z2がスオウに差し向けた三人のパイロットたち、ヒロヨシ=ニシモト、トシオ=オオノ、トシアキ=ホンノは、かつての第一次大戦の最中、シゲハルが隊長を務め育てあげた、戦闘機のエリート部隊、空の王者”帝王”のメンバーであった。メンバーは上記三者とシゲハル、そしてもう一人、ジュンイチ=ササノの5人で結成された部隊であり、数々の空戦において、輝かしい戦績をたたき出してきた、空の覇者たちであったが、第一次大戦終了時に”帝王”は解散となった。シゲハル以外は、現在の第二次大戦中いおいても、バルドー海軍に所属しているが、この度シゲハルを慕って、三人のメンバーがZ2の呼びかけに集まった。因みにジュンイチ=ササノは、遠征中のため集まれなかった事情がある。第一次大戦中は、この”帝王”のメンバーで、潜り抜けてきた空戦の数は知れず、シゲハルにとって彼らは、極限の戦場の苦楽をともにしてきた、かけがえのない大切な戦友そのものである。Z2という男は、自分の恣意的感情で、愛する部下たちの命までもてあそぶ。シゲハルの怒りは頂点に達した。

(このクズが!!)

怒りに震えるシゲハルの耳に、再度Z2の声が電話越しに届いた。

「よって、三人がスオウ君を撃ち落とすことができたなら、女王の暗殺をやめてあげる。彼らが勝てるように隊長として、的確な指示、采配をしてあげなよ。今、ヒロヨシ君たちとつないであげる、心行くまで再会を喜び合うといい。」

しばらくの通信音の後、ヒロヨシの懐かしい声が聞こえてきた。

「シゲハル隊長、久しぶりです。現在目標、ジャンジャック=スオウ撃墜のため航行中であります。我々は昔、数々の死闘をともに潜り抜ける最中、心に決めたことがありました。即ちシゲハル隊長、いつかあなたのために、命を懸けると誓った。今やっと、その時が来ました。さあ、勝ちに行きましょう隊長!そして、歴史の上に証明してやりましょう、我らが王者、”帝王”こそ、真の大空の覇者だと!!」

ヒロヨシたちの熱意におされ、シゲハルは指揮官として指令を出した。

「ジャンジャック=スオウに、直接の格闘戦を挑むのはすこぶる無謀。相手より高く飛べる優位性と、防弾性を活かし、相手の弱点を見極め、的確なタイミングでの機銃掃射において撃ち落とすべし。慎重かつ果敢に奮闘するよう、心から健闘を祈る!」

切電後、イオリは急ぎ、本国のラーミラ王国首相に、女王暗殺計画の旨を通達した。国内外、および女王自身の、激しい混乱を避けるため、極秘で対処する方針を固め、より一層の女王護衛体制を厚くし、厳正に対処するよう共有した。

かくして、島国サロームの、地獄の地上戦の停戦を賭けたスオウと、女王暗殺阻止を賭けた、シゲハル指揮下の、三人のパイロットたちによる、熾烈な大空の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

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