矢に穿たれ、みるみる虫の息になって地に倒れこんだヒスイを、ハインは刺客達とともに取り囲み、氷のような冷たい眼で見降ろしていた。
「一刻も早く、ヒスイの手からヒエンを奪還しなければ……….。」
ヒエンを連れ戻すことに、恐ろしいまでの執念を傾けたハインの思いが、ここにきてようやく実を結んだ形となってしまったのだった。彼女が眠りについている洞窟は、そこから目と鼻の先だった。
(…………………….死ぬ……………!!)
とめどない流血の最中、彼の脳裏に「死」が確実によぎり、容赦なく彼の意識に覆いかぶさってきた。
(自分はどうなってもいい………だが……..、ヒエンだけは………………………….。)
「あーあ、あんたまた死にかけてんのかよ!?」
意識がどんどん遠のいていく、そんなヒスイの目に、黒い服の若い男が大きな鎌をもって立っていた。
「初めまして、と言っても、過去に俺はあんたに会ってるんだけど、その時あんた死にかけてたから俺のこと分からないだろう? 俺は死神、死者の魂を狩る者だよ。」