G-75DH3GZ7WH SCARLETLOVESONG-暁の情熱 第八話 - 無料小説漫画 フルムーン

SCARLETLOVESONG-暁の情熱 第八話

SCARLET LOVESONG-暁の情熱

Z4の友人である実業家の、ジャンジャック=レオポルドが訪ねてきた。ちょうどZ4がモニターで、ある女優を眺めていた時のことである。

「おいジー(Z4のこと)、何見てんだよ?ハガネちゃん?じゃない、おい、浮気かよ、ん?マリア=オルレアン、大女優じゃないか。」

マリア=オルレアン。数々の映画に出演し、銀幕の世界を席巻し名声を博してきた美貌の女優。また、彼女にはかつて、国際平和に貢献した功績もあった。彼女の出身地であるタスク地域には、二つの民族が土地の支配権をめぐって、日々血みどろの抗争を繰り広げていた時期があった。双方の民族に人気のある、国民的スターの彼女は、積極的に双方に和平を強く提唱。その尽力により、武力抗争は休戦、ついには終戦を結実させるのに大きな役割を果たしたのだった。終戦を迎えるまでに、数々の反対派の妨害や脅威に晒されたがそれに屈せず、和平を実現させた彼女は、かつて自身が演じた役に因んで”タスクのジャンヌ=ダルク”ないし”鉄の女優”の異名を持つに至ったのである。

「相変わらず美しいな、実は俺、昔彼女に振られたんだよね。」

突然のZ4の暴露に、レオポルドの目は一気にニヤけた。

「おいマジかよ!?ハッ、ウケる。おいその話、詳しく聞かせろよ!」

最近Z4は思いもよらない方向から話題を繰り出す。まさに一寸先は、笑い。

「えっと、彼女が女優になるずっと前の話だよ、あっ、付き合っちゃいないし、告白したわけでもない、あっでも…….告白…..したほうがよかったのかな?」

「このアホが!!そんなの100パーセント失敗だよ!マリアが角に三回ぐらい頭ぶつけて、イカレた状態になった上で、何か特異な要素加わらない限り、お前じゃ1パーセントの成功率もねえよ!!」

(怒……。)

怒りに耐え忍ぶZ4に、レオポルドはさらに問いただした。

「で、告白してもいねえのに、どうやって振られたんだよ?」

「ふ、振られたというか、俺の記憶によるとたしか、自分の興味のある話題だけを、マリアにしゃべりまくって、やべえレベルでドン引きされまくった覚えがある。えっと実は俺、女の子が喜ぶ話全然できなくて、だから、その…….。」

「そんなんとっくに知っとるわ!!実はって、何?周りが、少なくとも俺に悟られてないとでも?あっ、いや、そんなこと今に始まったことじゃねえよ、だから、そんなに気にするなよ。」

「(怒…..)ま、まあ、それからマリアが女優になってからも、ずっとファンでい続けてる。彼女の出演作品は全部見てるし、そうだなあ、彼女の演じた役の中でも、ジャンヌ=ダルクと淀殿は特に美しかったなあ。でもずっと見てるとね、その、あるんだよ至る所に!ラ、ラブシーンが!ああ、彼女のラブシーンなんて、マジで見るに堪えない……うう….。」

Z4は勝手に一人で嘆きだした。以下、念のため記しておくが、次の()内はレオポルドの心の声。口に出してないよ、それぐらいはいくら彼でも友人に対して、デリカシーぐらい持ってるよ。

(なんか照れてニヤニヤしてたかと思うと、いきなり涙目になって膝抱えて、ガンガン頭打ち付けて、唸りだして、うわっ、気持ち悪…。)

「ちなみにマリアのファンクラブにも入ってる、イベントもちょくちょく行った。」

「ファ、ファンクラブまで!?どんな名義で入ったんだよ?Z4かよ!?イ、イベントも気になるけど、ハガネちゃんのファンクラブは?」

「ま、まだだよ、恥ずかしいだろう!!」

ひととおり嘆くなり、恥ずかしがるなりした後、Z4はどこからともなく花を一輪とりだした。

「俺の一日はこの花占いから始まる。即ち花びらを一枚ずつとっていって、マリアは俺を”愛してる”、”愛してない”って交互にやっていくあれ。何十年もやってるけど、結果”愛してる”になったことが一度もない。それでその日の俺の気分は決まる。」

「ツッコミどころが多すぎなんだよ!!花占いって、お前毎日わざわざ花買ってそれやってんのかよ!?棒でも倒しとけよ占い結果右に倒れたら”愛してる”、左に倒れたら”愛してない”とかさ。それにどう考えたっておかしいだろう、その花。たとえマリアにその気がなくても、やってればそのうち結果”愛してる”になるだろうが!何より、いい大人が、そんなものに一日の気分託すなよ!!それならお前の気分何十年もいつもブルーじゃねえか!!」

「うん。」

「う、うんって….(こいつヤバッ)。」

レオポルドが唖然としているのを横に、Z4は無言で、花びらを一枚一枚取り除いていった。そして最後の一枚を残して、その手がピタリと止まった。

「ま、まあ、ハガネの方がかわいいけどね…….。」

レオポルドは返す言葉もない。

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