G-75DH3GZ7WH SCARLET LOVESONG-暁の情熱 第七話 - 無料小説漫画 フルムーン

SCARLET LOVESONG-暁の情熱 第七話

SCARLET LOVESONG-暁の情熱

ハガネがZ4に出会える機会はそう多くはない。その限られた時間の中で、彼に出会い抱きしめる瞬間は安らぎと安寧に包まれ、彼女にとって自分が今まで生きてきた中でも、一番幸せなものだった。この時のために彼女は、全ての苦しみも葛藤も受け入れてきた、この腕でこの男性を支え、抱きしめるためだけに。しかしそんな至極の時間と隣り合わせに、彼女は常に言いようのない恐怖に苛まれていた。なぜならZ4はあまりにも謎が多く、深い闇に覆われ閉ざされている。ハガネにとって彼は得体の知れぬ”大いなる暗黒”であり、とても恐ろしい男性でもある。

(Z4、あなたのことがもっと知りたい。)

彼女自身、彼に聞いてみたいことは山のようにあったのだが、それでも同時に彼について、愛するがゆえの、真実を知ってしまうことへの恐怖が彼女を沈黙させた。自分は何をしていても、たとえどこで誰と会っていようとも、彼女の脳裏にはいつもこの男性がいつづけている。彼に出会い抱きしめた、その時に感じたぬくもりを思い出しながら、疲れ果てた体にかろうじて与えられた、超絶短い眠りに落ちる。自分はそうであるけれど、でも彼は、この男性の心に自分が入る余地があるのか、今こうしてそばで抱きしめているあいだも、自分のことが少しでも眼中にあるのか、また何を考えているのか、ハガネにはこのZ4の心のうちが、皆目見当もつかない。そばにいても、背中合わせに常に存在する不安と悲しみと切なさを、少しでも分かってほしくて、彼女は時に小刻みに、時にはそれより長い時間、彼の口唇や身体の至るところに、キスをした。彼の身体を抱き寄せ、その胸に顔をうずめるのはいつも自分ばかり、この男性はそんな自分に何かを求めたり、強く抱きしめ返してもくれない。ただ一つだけ確かに分かっていることは、彼は自身の左顔面から左半身にかけて、絶対に誰にも触れさせない、そこに内包される”秘密”を、ひた隠しにしていることだけだった。ハガネがその部分に触れようとすると、たちまち彼はそれを拒む。彼を知ることへの恐怖はあるが、それをはねのけてでも、彼女はやはり”左側の秘密のベール”を開いてみたかった。それがZ4を知る、唯一のカギである気がしたから。

「あなたがひた隠しにするその左側に、あなたが”ゴースト”とも”怪人(ファントム)”とも言われる、由縁があるのでしょうか?」

「…………….。」

それについて、Z4はあくまでも沈黙を続ける。なのでハガネはもどかしい気持ちを胸に押し殺すほかない。

「私は、世界秩序の番人ともフィクサーとも言われるあなたが、具体的にいつもどんなことをしているのか、また、何を考えているのか皆目見当もつきません。それは、私にはどうすることもできないことです。なのでせめて、今こうして会ってくれる時間だけでも、少しでも私を見てください。」

最後にハガネは彼の左の額や頬にキスをする。それだけは拒まれたことはなく、そして、それだけは許されているようだから。

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