G-75DH3GZ7WH SCARLET LOVESONG-暁の情熱 第二話 - 無料小説漫画 フルムーン

SCARLET LOVESONG-暁の情熱 第二話

SCARLET LOVESONG-暁の情熱

女優としてメジャーデビューをはたしたハガネ=ミドウ。それからの彼女の仕事ぶりは、とにかく凄まじいものがあった。ドラマにバラエティーに映画、雑誌の取材にアイドル、歌手活動と、仕事は絶対に断らない、まさに”仕事の鬼”であり、一気に大人気女優としてのし上がっていった。というのもそれだけが、唯一ジークリード4th(以下Z4と記載)と彼女のリンク、接点であったからである。

Z4と初めて出会って以来しばらくの時が経ったが、あの日以来彼女はZ4と一度も出会えることもなく、もちろん連絡はおろか、メールすら返ってこない。そんな状況下で、彼女の不安と焦燥は、日を追うごとにますます強くなっていった。自分がこんなにも仕事で体を張り、笑顔を振りかざし、真の自分とは違う役柄を演じて、時に心も体も限界に達して壊れていく物音が聞こえることさえ、一日のうちに何度もある。

それなのにいっこうに光が見えない。このままこうしていて自分は、愛する男性に認めてもらえるのか、振り向いてもらえるのか、その眼差しを手に入れられるのだろうか….。実際、自分がこんなにも思い焦がれているのに、愛する男性は今この瞬間、自分のことなど微塵もその脳裏には、浮かぶことすら決してないだろう。どんなにもがいても、このきわめて残酷な現実に、彼女にはどうすることもできないのである。このままでZ4はいつか、自分を見てくれるのだろうか、そんな未来が待っているのだろうか、否、そんな希望を少しも見出すことができなかった。それでも彼との関係をつなぐ、”唯一の命綱”である仕事を、絶対に止めるわけにはいかず、彼女の不安も絶望も、いつしか最高潮に達していた。

「Z4、あなたに会いたいー。」

そんな切なる思いを抱きながらも、ただ時間だけが無残にも過ぎていった。そんなある日、Z4についてある情報がもたらされた。彼はある小島のプライベートビーチを所有し、忙しい合間を縫って、たびたびそこにきているという話であった。ハガネはいても立ってもいられず、スーパーハードなスケジュールを調整し、そのビーチにむかった。

ザザーン、ザザーン。

Z4のプライベートビーチは、入江に趣深い風情、情緒をまとった、いくつもの岩礁が夕焼けの朱に浮かぶ、とても美しい海岸である。

(あのひとは来ているのかしら、どうしても、一目だけでもいいから会いたい!)

浜辺にむかう道すがら、上り坂を足早に駆けあがり、海の彼方の水平線を望むことができるよう、広く視界が開けたところで、ハガネの足は止まった。

(Z4!)

彼女が夢に見てきた瞬間がおとずれた。赤い斜陽の光に照されて、逆光ではっきりと見えないが、一人の男の立ち姿を、ハガネの瞳の奥に黒く浮かび上がらせた。彼女は確信した、あの日以来ずっと出会えることのなかった、何よりも待ち焦がれた愛する男性、Z4そのひとである。

この日は夕陽がとにかく真っ赤であった。たとえるなら血のような、深紅の鮮血が、溢れんばかりにほとばしるような、とても赤い赤い夕陽。情熱のヒロイン、ハガネ=ミドウと、Z4。まるで二人のこの先を、如実にあらわしているかのように。

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