G-75DH3GZ7WH AGE-原罪-第八話 - 無料小説漫画 フルムーン

AGE-原罪-第八話

AGE-原罪

極限に飢えた少年が乗り飛行する戦闘機を、捕捉ないし最悪撃ち落とそうと、バルドー陸軍飛行場から発進した数機の戦闘機は、目標に向けて次々に機銃を乱発した。しかしこの少年は、思いがけないこの、人生初の飛行(という名の実態は逃走)で、日々訓練を受けた職業軍人であるパイロットたちの攻撃を、信じられないほどの技量で操縦桿を駆使し、機銃掃射の嵐をかいくぐっている。機銃が発せられてからでなく、どうもその前に相手の機首の向きや挙動などあらゆる情報を、視覚をはじめとする五感で分析し、機銃の弾道を的確に読み取っていた。それをもとに軽やかで巧みな旋回、さらには尋常でないほどのスピードで、完全に追撃者であるパイロットたちを翻弄している。

ただ少年は、彼自身を猛追するその攻撃に反撃する術を知らない。機銃の撃ち方が分からず、照準器を睨みつける余裕など到底ない。そのためとにかく逃げまくっていたのだが一対複数、とうとう主翼に数発被弾、黒煙をあげはじめた。そのまま墜落すると思いきや、何とか飛行場外の草原地帯へ、完全なる三点着陸とはならなかったが、不時着に成功した。だが彼はコックピットから脱出するのと同時に、とうとう力尽き意識を失い、そのまま倒れこんでしまった。

少年の搭乗した機体は第一次大戦下におけるバルドーの、敵対陣営の盟主国ドゥーシェに対抗するために開発された戦闘機で、現時点では試作段階の状況であった。彼の搭乗および飛行により、操縦する者の驚異的な”神の手”を借りれば、恐ろしいまでの旋回能力と機動性を発揮できることが証明されたため、開発者たちは歓喜の声をあげた(後の調査で、その機体はエンジンやあらゆる部品が、オーバーヒート寸前であった。まさに奇跡の逃避行であったわけだが)。ただその機動性を重視するあまり、機体は非常に軽く防備は脆弱であり、それについては改良の余地がまだまだあることも、同時に明るみになった。

少年が意識を失って、しばらくの時間が経過した。気が付くと彼は、ある医療施設のベッドの上に、完全なる手厚い治療を施された状態で、寝かされていたのだった。

「気が付いたかね?」

一人の男が部屋に入ってきた。先ほどこの少年の”神技”に魅せられた、バルドー政府高官、陸軍大臣スグル=ムラサメである。まだ状況を理解していない少年に、彼は立て続けに語りかけた。

「私の息子、養子にならないか?私に、この国のために、どうか君の力を貸してほしい!」

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