突き刺さった矢によって、自身の命が風前の灯火となってしまったヒスイの前に、死神が現れた。
「やっとあんたも死にかけてるということで、俺が見えるようになったんだな。俺は死神、昔追手に襲われて、あんた矢に突き刺さって死にかけたことがあるだろう? あんたの妹のヒエンに頼まれて、死にゆくあんたを助けてやったのは、この俺。それが縁でヒエンとは友達なのさ。」
(…………………..死神…………..?)
状況を呑み込めていないヒスイに、死神はなおも説明を続けた。
「昔瀕死だったあんたを、ヒエンはある対価を受け入れて助けたんだ。その対価とは……..、君たち双子は、たとえどんなに愛し合っていても共にはいられない….いつか必ず引き裂かれる運命を迎える、彼女はこの条件、対価を受け入れたってわけだ………….。」
(………………………….。)
「その対価によって、決してあんたと結ばれない運命を悟った彼女の失望は、あまりにも大きかった。そこで彼女は、新たな対価を支払うことを決意したんだ。気づいていると思うけど、最近ヒエンが変わっただろ? あれは、”限りある命をもつ人間”、それを捨てて俺のようなおぞましい、”永遠の命”を生きることを受け入れた結果だ。それによって彼女は永遠の、ある種の地獄を生きる代わりに、悲しみと苦しみ、その記憶は彼女の中から永遠に消し去られた。兄貴と結ばれないならせめて、心からの幸せの中で、あんたを永遠に愛し続けたいという、彼女の願いのために………。」
(…….ヒエンが俺のために……!?)
「永遠に生きるヒエンに対して、あんたはもう虫の息、まあ…….ヒエンの親友として、友達を思ったがゆえのことだが……….ここへきてそんなあんたに、最大のチャンスをやろう!」