G-75DH3GZ7WH SCARLET LOVESONG-暁の情熱 第一話 - 無料小説漫画 フルムーン

SCARLET LOVESONG-暁の情熱 第一話

SCARLET LOVESONG-暁の情熱

地方都市の劇団女優、ハガネ・ミドウは、ある日”世界秩序の番人”または”この世の支配者”とも目される、ジークリード4thにメジャーデビューの話を持ち掛けられる。大衆を魅了するスター性を持ちながらも、俳優業にほとんど執着のない彼女だったが、つかみどころのないミステリアスなジークリード4thに燃え上がるような恋心を抱くようになると、”この人に最高の自分を見てもらいたい”その一心でメジャーデビューを決意するに至る。恋に女優業に、妥協許さぬ燃え上がるような情熱を傾けそして決意する、「この男性のために私は、世界一の女優になって見せる!」”炎の女優”ハガネの挑戦が、今始まる。↓↓↓

地方都市バーチカルビーチのスノー劇団が本拠地としている劇場。その公演中の最中、数人の黒いスーツにサングラスをかけた男たちが、彼らのボスである男から携帯電話ごしに指令を受けていた。

「いるだろう一人、主役の女優以上に観客の目を惹きつけている美女が、彼女がハガネ=ミドウだ。彼女を俺のところに連れてきてよ。」

ハガネ=ミドウ、スノー劇団に所属する女優。年齢二十歳前後、比類なき美貌を持ち、どんなに大勢の大衆にまぎれても決してうずもれることのない、彼女の燃え上がるような紅の長い髪はその美しさを一層引き立たせ、人々の目を魅了して決して放さない、類まれなるスター性を持った美女である。

しかし、彼女自身は俳優業に心が傾くことは決してなかった。そもそも劇団に入ったのも、亡き両親が残した借金を返すためだけであり、今回の舞台も彼女が主役に抜擢されたのだが、自ら脇役を希望したため、その上での配役だったのである。

「ハガネ、実は今から会ってほしい方がいるんだよ。」

公演終了後、団長が彼女に声をかけてきた。不思議がっている彼女の前に、先ほどの黒のスーツの男たちが現れ、彼らの指示で車に乗りどこかへ移動した。彼らはどうも誰かのSPらしい。

「私に会いたいって方、どんな方ですの?」

車中ハガネは男たちに話しかけた。

「ご無礼をお許しください。実は我々のボスで、この世界の”実質的な支配者”とも、”世界秩序の番人”とまで言われる、トップシークレット中のトップシークレット級の方です。」

その名はジークリード4th(以下Z4と表記)。この世界各国の政治、軍事、経済にまつわる全ての情報を彼独自のネットワークシステムにおいて統括、管理、そして支配する、実質的この世の支配者と目され恐れられている人物である。近現代の歴史においてこのジークリードは、2nd(二番目)と3rd(三番目)の存在は確認されている(オリジン(初代、起源)は全く不明)。特に血縁関係はないが、その時代の支配者が人呼んでジークリードと呼ばれ、そして現在のジークリードはこの4th(四番目)である。

(なんでそんな人が私に!?)

走行中ある地点からハガネは目隠しをされた。Z4の居場所は最重要機密のためどこを走りどこへ向かっているのか、彼女には全く分からなかった。ますます不安が大きくなっていくが、とうとうある建物の、どうも地下に入ったらしい。そこのある一室にたどり着いた。

「やあ、ハガネさん、はじめまして。わざわざこんな所までお連れして、申し訳なかったね。」

扉の向こうに一人の男が座っていた。これがZ4である。にこやかで人当たりのいい気さくな男であるが、この笑顔は計り知れない謎のベールが覆いかぶさっているようだった。

(この人がZ4?)

さっきまでの押しつぶされそうな不安を押しのけて、この男を前にハガネの胸はひとりでに高鳴った。そんな彼女にSPの一人が耳元でつぶやいた。

「あれは仮のお姿、即ち変装です。本物のお姿は我々を含め、誰にも分かりません。なのであの方を”ゴースト”ないし、”怪人(ファントム)”と呼ぶ者もいます。ではお話を。」

男たちが部屋から退出し、ハガネとZ4二人だけの空間となった。

「改めまして、俺はどうもまわりからジークリードとよばれているらしい、そういう者だけど、実は君にお願いがあってね、もうスノー劇団とは金も払って話はついているんだけど。」

Z4と向かい合わせに用意された椅子に座るも、ハガネの緊張は最高潮に達した。でもどこか彼の爽やかな笑顔と人となりが、いつのまにか彼女の不安を心地いいものに変えていた。ずっとこの人に会いたかったような、会うために今まで生きてきたのではないか、そう思わせるほどに。

「実は俺の”活動”を支えるために、エンタメ業を展開しようと思ってね。君にはうちの看板女優になってほしくて、はやい話がテレビでメジャーデビューしてほしいってこと。」

「メジャーデビュー!?」

Z4の言葉にハガネの頭は真っ白になった。だがしばらくの沈黙の後、彼女の彼に対する知的好奇心が勝り、思わず口を開いた。

「私も、あなたに質問をしてもよろしいでしょうか?あなたは、”世界秩序の番人”と言われているようなのですが、具体的にはどんなことをしているのでしょうか?」

ハガネの質問にZ4はしばらく考え込んで、答え始めた。

「俺そんなふうに言われているらしいし、確かに俺の開発した独自のネットワークシステムを使えば、世界中のあらゆる情報を取得、働きかけもできるだろう。だけど….、たとえば数十億にも及ぶ人間が生活する、この世界のあらゆるネットワークを俺が操作したなら、その投じた一石が生じる波紋がどこでどう作用し、何を結果として生み出すのか、とうてい予測不可能というのが実情。俺自身死ぬほど考えたし計算もしたけれど、結局分からない。だから俺は、極力この世界に干渉しない、不介入を貫くことを決めてるんだよ。だから要は”この世の支配者”なんて言われてるようだが、みんなが思っているほど何もしてないんだよ。ごめんね、だいぶつまんないオジサンンで((笑))、あ、間違いなく俺君の倍以上は生きてるよ!まあ、こんなんでも、Z4としての活動はいろいろ金がかかるの、だからエンタメ業もその資金調達の一環。どうかな、引き受けてもらえる?」

「….劇団にはもうお金も払っているのでしょう?」

恐る恐るハガネは口を開いた。

「正確には、君との交渉権を金で買ったってこと、だからやるかやらないかは君の意志だ。」

それだけ話した途端、Z4の目の色がいきなり変わった。その瞬間、向かい合わせに座っているハガネのほうに彼の手が伸び彼女をその胸に引き寄せ、そのままそばにあった机を盾に身を隠した。それと同時に部屋の扉が力強く開け放たれ、先ほどのZ4のSPとは別の、武装した男達が乱入してきた。

「やっと見つけたぞ!!この世界のすべての艱難の元凶め!!」

そう叫ぶと男たちは、容赦なく部屋中に銃弾を乱射しまくった。騒ぎを聞きつけてSP達が手慣れた手つきで、すぐに武装集団を取り押さえたが部屋中は大惨事。そんな中、ハガネはZ4の腕の中で守られ、幸いなことに無傷であった。

「今日は君が来るのもあって、ビビらせないために仰々しい警備をいつもより手薄にしてたんだ。それでも十分大丈夫だと思ったんだけどね。本当にごめん、最悪俺が死んでも別にいいにしても、君をこんな目に合わせて、本当に申し訳なかった。それにしても俺、世の中に対して別段何もしてないのに、なんか誤解を受けて恨まれてんだなあ…。」

あんな殺戮現場に遭遇しながら顔色一つ変えず、Z4はいたって冷静だった。どうもここに来るまでに、いくつもの修羅場を潜り抜けているらしい。恐怖よりも何よりも、ハガネはそんな彼の、自分の保身に対する執着の無さに、何よりも腹が立った。どうして自分をもっと大事に守ろうとしてくれないのか。もっともどうしてこんなに腹が立ったのか、その理由に、Z4への気持ちにもうとっくに気づいていたわけだけれど。

「どうして!?どうしてこんなにも危険なめにあっているのに、あなたなら、自分の命を狙う者たちを見つけ出して反撃することだってできるはずなのに!!」

怒りが抑えられず、ハガネはZ4に詰め寄った。

「俺にも自分の意見や考え、尊厳があるように、相手にだってそれはある。自分とただ考えや意見が違うからといって相手を排斥するなんて、それはおかしい話だろう?」

「……………..。」

この後もZ4は落ち着いた様子で、淡々とSP達に支持を出し事後処理にあたっていた。

自分の命を狙われ、憎まれてもそれを引き受け君臨しているというのか、なんていう、なんていう男性だ…….。Z4のそんな姿勢に、ハガネの心に燃え上がるような情熱の炎がたぎり、そして決意した。

「やります、私、メジャーデビューして、必ずあなたの意にこたえてみせます。」

この男性のために私は、世界一の女優になって見せる!

それを受けてZ4は喜んでいた。炎の女優、ハガネ=ミドウの挑戦が今、始まる。

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