G-75DH3GZ7WH SCARLETLOVESONG-暁の情熱 第十七話 - 無料小説漫画 フルムーン

SCARLETLOVESONG-暁の情熱 第十七話

SCARLET LOVESONG-暁の情熱

入院を経て、ハガネの体調はなんとか快復し、仕事にも復帰できた。以前と比べて仕事の量はだいぶ減ったが、それでもずいぶん忙しい日々をおくっている。なので今日は、本当に久しぶりのZ4との再会である。彼のメールの返信を待ってからの再会、というわけではない、なかば強引におしかけての会合である。ハガネは、自分が近づけば近づくほど、その心に触れようとすればするほど、この男性は自分から遠ざかっていく、ともすれば、もう二度と会えないかもしれない、そんな恐ろしさに駆り立てられて、いても立ってもいられなくなったのである。Z4は相変わらず、ハガネが10話す、ないし質問しても、2か3返ってくればいいほうだ。二人の間には、何も話すこともなく、何も起こらない時間もなかなか多い。彼女ははそんな時間がむなしくて、それならせめて向き直って、彼に口づけようとした、と、見せかけて、次の瞬間、隠し持っていたナイフの、その切っ先を自身の喉にむけて、彼に囁いた。

「一つ”賭け”をしましょうか。私はこれからあなたに、いくつか質問をします、答えたくなければ答えなくていい、その質問のうち、一つでもあなたが答えてくれるなら、このナイフをしまう、でも最後まで、一つの質問にも答えてくれないのならその後、私があなたにキスをしようとして、あなたの口唇に近づく、そうすればこのナイフの切っ先は、私の喉を容赦なく切り裂きます。」

ハガネは自分とZ4の間にある、如何ともしがたい厚い壁は、彼について、あまりにも何も分からないこと、彼のまわりを取り巻くベールが、あまりにも暗黒であることに由来するのに、何の疑いも持っていなかった。たとえ意図せずとも、それが、あまりにも二人の間に、ピリピリと肌を突き刺すような痛みをともなう、緊張感を作り出していた。まるでいま、ハガネがZ4との間においた、白々と狡猾な青白い光を放つ、このナイフのように。だから少々、いや、だいぶ危ない賭けにでた(よい子は絶対マネしないように)。そして彼女が考えるに、その刃の矛先は、自分以外にありえなかった。Z4、この男性の喉元に、ナイフを突きつけたからといって、間違いなく動じることはない。それどころか、下手をすれば、それを受け入れかねない、それはそれで、とても恐ろしいことである。即ち、Z4をナイフで脅したからといって、何も得られないのは、目に見えているのである。そして彼は、しばらくの沈黙の時間を経て、ナイフを握るハガネの右手に手を伸ばした。

「バカなことはやめろ!!」

そう言って、彼女の手からナイフを奪い取った。力では、どうやっても男には勝てない、”危ない賭け”は無残にも、何の戦果もなく終わった。ナイフを奪われた彼女は、なんとも気まずい。それでもどうしようもなく、帰らなければならない時間はやってくる。最後にZ4の口唇と左頬にキスをして、彼女は部屋を出ていった。一人になってZ4は、奪ったナイフの切っ先を眺めながら考え込んだ。

(君が見ているのは、この偽りの姿だろう?本当の俺を知って、この醜態を目の前にして、君は本気で、この俺を愛せるというのか!?)

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