G-75DH3GZ7WH AGE-原罪-第三話 - 無料小説漫画 フルムーン

AGE-原罪-第三話

AGE-原罪

目標に狙いを定め、上空高度から、シューティングスターは”蒼き狼”めがけ、一気に急降下した。シゲハルの奇襲作戦の開始である。

(何かが襲ってくる……。)

あらゆる方面に、神経をとがらせて海上を航行する、スオウとカズキ。とくにカズキは、突如世界が、”得体の知れない殺気”によって一変したのを、情け容赦なく味わわされることになった。まわりをとりまく大気が、ピリピリと彼の肌をつんざき、恐怖で震撼させられるのを、ひしひしと感じた。そして彼は、狡猾に獲物を狙う、鷲の鋭い刃が、今にもその背中を貫こうとする、狂おしいほど破壊的な、修羅の空間と、波の平穏な恐ろしいまでの、静寂が交錯するその瞬間、この世の破滅を見た。

すなわち”悪魔”が限りなく、スオウの搭乗する蒼き狼に、目にも止まらぬ速さで近づき、その刹那一瞬で、胴体内爆弾倉から的確に、爆弾を目標に投下した。

「ズドーン!」

爆弾の炸裂とともに、凄まじい爆音があたり一面に響き渡った。間一髪、爆発をギリギリのところで逃れた、蒼き狼と、それを追う悪魔こと”シューティングスター”は、一気に海上を、目にも止まらぬ速さで駆け抜けていった。

ここでシゲハルが、戦闘機シューティングスターをして行った、”急降下爆撃”について言及しておこう。それは、上空高度から、主に戦艦や空母を標的にし、急降下しながら照準を合わせ、爆弾を投下するものである。目標にかなり接近するため、爆弾の命中率は高いが、同時に弱点もはらむ。すなわち急降下を遅い速度で行うと、戦艦などの軍用艦から、狙い撃ちされてしまうのである。かといって、速度を上げすぎると、そのまま海に落ちてしまう危険性があるので、熟練のパイロットをしても、かなり難しい技術である。しかし、このシゲハルという男は、誰よりも速く、目にも止まらぬ速さで目標に近づき、信じられないほど精密に照準を合わせ、爆弾を標的に命中させ、海面スレスレで機体を引き起こし、脱出するという、とんでもない芸当を披露する。

しかも今回の目標は、戦艦や空母とは比にならないほど、小さな戦闘機、すなわちスオウの搭乗する、蒼き狼である。おまけに月明りしか頼れるもののない、闇夜の海上で、戦闘機に急降下爆撃をぶちかますなど、歴史の上でも、もちろんこの、作者自身も聞いたことのない話である。たとえるなら、地獄に無数の針を擁し、高くそびえる針の山の、月明りだけをたよりに、その中のただ一つの針を、捉えるがごとく、それほどまでに、難しいはなれ技であろう。

その身に受けるであろう艱難も、苦しみも痛みもすべて受け入れ、この戦争の時代を選び、そして、戦闘機パイロットになるために生まれてきた、まさにシゲハル=ムラサメとは、そういう男なのだ。

このシゲハル=ムラサメとジャンジャック=スオウ、カズキ=キサラギの運命や如何に。

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AGE-原罪-(1)
世界が二つの陣営に分かれ、各国が戦火を交える世界大戦の時代、大空を駆け巡る”蒼き狼”と恐れられた一人の戦闘機パイロットがいた。その名はジャンジャック・スオウ。地獄の業火に焼き尽くされた極限の戦場の中で、生きる意味と希望を探し求め、それなのに...

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