G-75DH3GZ7WH SCARLETLOVESONG-暁の情熱 第十四話 - 無料小説漫画 フルムーン

SCARLETLOVESONG-暁の情熱 第十四話

SCARLET LOVESONG-暁の情熱

映画「スカーレットラブソング」の撮影が終わってしばらくして、ハガネはメジャーデビュー後初めて、Z4に呼び出された。しかしその理由は、彼女が求めるようなものではない。彼女自身もそれは分かっていた。要は、先の映画の撮影においての流血沙汰の追及だ。久しぶりの対面にもかかわらず、どうしてもハガネはZ4の目を見ることができない。想像通りだが、彼の表情はいつになく険しい。ただそれは、間違いなく彼が、「スカーレットラブソング」は見たという紛れもない証だった。それだけは素直に、とても嬉しかったのだけれど。

「映画のことだけど、あんな、あんなにも自分を痛めつけて、そんなことまでするぐらいなら、もう女優なんてやらせられないよ!今決まっている仕事含めて、一切やらなくてもいい、もう女優なんてやめなさい!!」

そこまでZ4に、強い口調で何かを言われたのは初めてのことだった。ハガネはどうしようもないほど悲しくなり、その瞳からたくさんの涙をこぼしながら、その場に座り込んでしまった。なぜなら、彼女自身が一番よく分かっているからだ。他人からの中傷や、いじめなど全く問題ない、自分を苦しめているのは、紛れもなく自分自身であることを。自分の意志とは関係なく、彼女は自分自身の心も身体も、跡形もなく破壊しつくして、芸術のレベルまでに、その演技力もスター性も高めてしまう。その衝動をとどめる術を、彼女は持ち合わせていない。一たびあふれ出したその情熱、いや、狂気の胎動は、防波堤を決壊させ、とめどなく流れ出す水のように、決して止められないのである。それは、かつてこの世界で行われた世界大戦の最中、数え切れぬほど数多の死闘と修羅場をくぐり抜けた、戦闘機エースパイロット、シゲハル=ムラサメの如く(拙著『AGE-原罪』にて登場)。

周りがどんなに認めようと、何をやっても、どんなに自分を苛め抜いても、ハガネは自分自身を決して認められないのだ。それどころか、自分が頑張れば頑張るほど、現実はいつも、彼女の願いとは裏腹に空回り、愛する男性との距離は、どんどん遠のいていく。それを思い知らされるたびに自分を苛む。以前鉄の女優が言ったように、大好きな男性の前で笑顔になることもできず、いつも悲しみと不安の顔ばかり出してしまう。自分ほど、こんなにもつまらない、こんなにもかわいくない女がいるんだろうか?そんな思いが日に日に心を覆いつくし、恐怖と焦燥にかられるたびに、彼女は自分を地獄へ、奈落の底へ突き落す。これでもかというほどに、自分を痛めつけ、使役する以外に何一つ、愛される術を知らないのだ。

そんな涙で崩れ落ちたハガネに、もはやZ4は何も咎めなかった。もう帰って休むように促してきたが、それでも彼女にも意地があった。せっかく久しぶりに会えたのに、ただでは帰りたくない。Z4を抱きしめ、その胸の中でしばらく泣いた、するととても驚いた。本当に初めてのことだったのだが、初めてそっと、優しく抱きしめ返してくれた、今までそんなこと一度もなかったのに。それから、ハガネの仕事は減っていった。Z4の指示が事務所にあったようである。

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